スペシャル寄稿

2012/6/20 更新

いきなりの爆弾発言だ。
「ひょっとすると、今回はMCないかもしれない。俺にとって、それにお客さんにとっても、有り得ないことかもしれないけど」

確かに、それは有り得ない!と言ってもいいのかもしれない。だって、茶会と言えば、その名の通り、Chageのプライベート・ルームで開かれるティー・パーティーのように、コンパクトな空間でChageの温かい歌声ともてなしの気持ちを間近に感じるコンサートなのだから。もちろん、その基本コンセプトを彼が忘れたわけではない。それどころか、今回の茶会開催にあたって、あらためてその原点に立ち返って考えてみたのだという。
「それは、チャゲトルズをやったからなんですよね。チャゲトルズがあそこまで弾けちゃったから、今回は“茶会”という場を通して、何か違うChageを披露したいなと思って。チャゲトルズが“動のChage”だとすれば、“静のChage”を横浜の街を舞台にお客さんとじっくり共有したいなということなんです」

とは言っても、「ただしっとりするだけじゃ駄目でしょ」というのがChage一流のこだわりだ。昨年、銀座で行われた“茶会”で展開されたハートウォームな世界を、舞台を横浜に移し替えて構成すれば、無難にコンサートをやり遂げられるはずだし、それがChageにとってもいちばん安心なやり方だろう。が、チャゲトルズのあの熱いパッションを体験した後では、その無難さはなんだかもの足りなく感じてしまったのだと思う。それに、ここのところのChageは何かを始めるたびに、いつも“新しい扉”を開こうと挑み続けている。相変わらずの、やんちゃで誠実なChageなのである。

ただし、今回の新しいチャレンジには強力なパートナーが登場する。Chageとまったくの同世代であり、しかもCHAGE and ASKAの『熱風』の作詞を担当してデビューし、いまや作詞界の第一人者となった松井五郎氏だ。
「同じ時代を歩んで来て、同じものをずっと見て来た人間が近くに絶対いるはずだと思って考えてみたら、松井五郎という男が思い浮かんだんです。で、五郎と組むとなったら、言葉のプロがそこにいるわけだから、言葉に関しては身を委ねてみようと思って」

というわけで、「今回はMCないかも」という話になるわけだ。
「俺のMCはその場の雰囲気で構築していくタイプだから、要するに真逆のことを五郎にお願いしてるわけです。完全に作り込んだ言葉を俺にぶつけてください、と言ってるわけだから。その上で歌うと、俺の歌い方も変わってくるんじゃないかと思ってるんですよね。というか、俺ひとりでやってたら絶対出てこない“新しいChage“が出てくると思うんです。それが、どんなキャラなのか俺にも全然予想がつかないんだけど、だからこそすごく楽しみなんですよね」

つまり、従来の形のMCはなくなるのかもしれないが、今回はChageの“歌”と松井の“言葉”がつづれ織りのように絡まって、新しい“物語”が紡ぎ出されるということ。それはきっと、“Chageの茶会”を楽しむ新しい形が提示されるということでもあるだろう。

今回も、Chageは新曲を披露することを約束してくれたが、この新曲は作詞・松井五郎/作曲・Chageという分担になる。だから、“茶会”のステージで展開される“物語”はこの新曲が生まれるまでのドキュメントでもあるだろうし、逆にその新曲が今回の“茶会”のステージを色鮮やかなひとつのシーンとしてオーディエンスの心の中だけに焼き付けてくれるだろう。

しかも、舞台は数々のドラマと名曲を生み出してきた港町、横浜。その垢抜けた空気をたっぷりと吸い込んだ、いつにも増してロマンチックなステージになるに違いない。

音楽ライター 兼田 達矢

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