イントロダクション

そして・・・永い一日

人は、記憶の中で生きられるか。自分が知っている「私」は果たして他者が知ってる「私」なのでしょうか? 真実と妄想の境界で、誰もがきっと不安を抱えています。時に、人は過去を再構築してしまう。それは未来のために必要なことでもあるのでしょう。ただ、愛する人の記憶の中で、変わってしまうことと、変わらずにいることを許容していくのは、少しつらいことのように思います。

主人公は誰でもない「私」と「貴方」。横浜を舞台に語られるのは、約100年に渡る時代の流れを見続けながら、自分を生きた「命」の話です。しかし、物語というほど起承転結があるわけではありません。日記として綴られていく主人公の言葉と、その行間から溢れだしたような歌が織られていきます。その時代毎に綴られる風景は、主人公の心象風景でもあり、「思い」の在り方を生む背景でもあります。言葉や歌のどこに感情移入できるかは人それぞれですが、これまで聴いたことのある歌も、今回は別の意味を持って聴こえてくるはずです。

「永い一日」とは「一瞬の永遠」でもあります。終演後にこのタイトルの意味するところを感じてもらえたら嬉しいです。誰でもない「私」と「貴方」が、実は、ここにいる私であり、どこかにいる貴方であり、ただひとつしか「命」が、なぜひとつしかないのかを、思うはじまりになってくれたら、と思います。

作詞家 松井五郎

PAGE TOP